【読書日記】原田マハ『たゆたえども沈まず』幻冬舎刊 

昨年(2019年)集中的に投与したマハ成分が切れてきて、無性にまたキメたくなり、思わず行き着けのブックオフへ行く。『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』と続けて服用した純度の高い作品の効き目は約10ヶ月ほどだったようだ。

店には最新刊の『風神雷神 上下』もおいてあったが、マハの主成分はやはり西洋美術であり印象派(とその周辺)でなければということで、ゴッホの生き様を描いた『たゆたえども沈まず』をチョイス。

原田マハの真骨頂は「邂逅」である。時に世代を超えた人と人との出会いが、謎解き要素を含めながら織りなす物語に、いつの間にか引きずり込まれる。その流れの中で生み出されていく芸術作品と、それらを生み出す芸術家の生き様に涙する。いくつかの邂逅がフィナーレに向けて走り出し、ひとつの点に収斂していく構成力に胸がわく。この収斂がもっともバッチリ決まったのはやはり『楽園のカンヴァス』だったかな(これで直木賞獲れなかったらもう獲れないね)。

で、 『たゆたえども沈まず』 はどうだったかというと・・・。当方が求めているマハ成分である「時を超えた邂逅」を思わせるプロローグで期待大だったのだが、そこはなぜか匂わせただけで回収されず(ネタバレ御免)。謎解き要素も特になく(1890年にゴッホが死ぬのはわかっているので)、どうしてもこちらが求めている成分は薄いと言わざるを得ない。が、ご本人も週刊文春のインタビューで「今回は、ミステリーやホラーといったジャンルの要素を極力排してみました。直球勝負の物語が読者に届くと本望です」 と答えているくらいなので、まあしゃーない。そういうコンセプト。

個人的には『楽園のカンヴァス』が★5個なら、『たゆたえども沈まず』は★3.8個。

もちろん、つまらない作品ではない。おもしろい。泣ける。双極性障害を思わせるゴッホと彼を愚直に支える弟。明治初期にフランスに乗り出し浮世絵を武器に奮闘する日本人画商たち。彼らの人生が交錯する美しいパリの町並み。これらの群像が徐々にゴッホの人物像、生き様、苦悩を描き出していく。この主題をあぶり出す技量はやはり賞賛に値する。悲劇に終わることはわかっていて決して明るい基調の物語ではないけれど、「芸術と生活の狭間で懊悩するゴッホ」が目の覚めるようなひまわりを描いたように、どこか希望を見いだせる、今からさあ前を向いて進もうと思わせる不思議な読後感の作品である。

彼岸の3連休にはちょうどよかった。

どうでもいいが、最近のブログってトラックバック、無いんだね。

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